「ねぇ、マスター。」3D版動画作成日誌 研究・検討編

ということで、前回(d:id:OIE:20110531)のエントリーのとおり、3D版「ねぇ、マスター。」の動画作成の様子を、リアルタイムに記録していきたいと思います。

今回の参考資料の紹介

・・といいながら、今日についてはまず、以前から少しずつ進めていた、作業に入る前の基礎研究と作成テーマの検討を簡単にまとめます。
前回、初めて3Dとして作成した「無限トランスファア」の際は、もう15年以上前(!)にステレオグラム立体視)が流行ったころの記憶をかき集めて、うんうん唸っていました(笑)。が、今回はこのときの経験に加えて、オーム社より新しく出版された「3D立体映像表現の基礎」でもう一度勉強をやり直しました。

3D立体映像表現の基礎−基本原理から制作技術まで−

3D立体映像表現の基礎−基本原理から制作技術まで−

本書ですが、現場で覚えるであろう作業的な内容を除く、立体映像表現の基礎知識と現在の流れが丁寧に記されていて、今の自分にはピッタリの内容でした。この日記についても、用語をなるべく一般的なものに統一したい観点から(そして自分の勉強も含めて・・)、本書で使用されている各用語を説明の中で使用していきたいと思います。急に日記の中に用語が現れるときは、簡単な補足も入れたいと思いますが、機会があればぜひ本書もご参照ください。

テーマ(というか取り組みたい課題)

・・前置きが長くなってしまいました。というわけで、上記参考書を読みつつ、動画全体への基本姿勢を検討した結果、以下のような指針に。

  1. (基本的に)すべてのシーンは平行法で作成。
  2. 曲のほうでは意識的に、音の高さの分布を遷移させているため、これとリンクさせたデプススクリプト(深さの遷移計画)を意識する。
  3. 前回「無限トランスファア」で避けた、字幕(歌詞)の挿入を今回はしっかり行う。


この3つ、実は前回と比べてかなりチャレンジングな内容です。まずひとつめの、平行法。前回はすべて交差法で作成したのですが、それは平行法の研究が足らず、早々に交差法のトライアンドエラーを始めてしまったため。参考書に解説があるとおり、基線長(左右カメラ間の距離)を補正する・・なんてさすがに考えつかなかった!実際、これを実現するには、AfterEffects上での事前の調整に加え、3D動画として左右の映像をまとめるときにもさらに調整(自分の環境では、これはPremiereの役割)が必要・・と、正直言って交差法より俄然難易度が高い気がします。しかし、画面隅のキーストーン歪みを避けられる、というメリットは、今回のように2Dベースの大きい背景を使うのにまさにうってつけ。覚悟して進みます。。
次、音の高さの遷移とデプススクリプトのリンク。より大きなくくりで言えば、動画の展開上、3Dの起伏の変化をどう盛り込むか・・ということになります。まったく手探りで配置を決めていってもいいのですが、すでに作曲の段階で、「高さ」は音の面でインプリメントしてあるため、これをうまく流用できないかと画策しています。すごく感覚的ですけど、立体視したときの起伏って、無意識的に高さの概念に変換されやすい気がするんですよね。曲作り上の音の高さも、実際の高さの感覚とかなり共通するものがあるため、間接的に深くつながりそうな予感がするわけです。ちょっとわかりにくい話ですよね。。これはいつか補足したいと思います。
で、最後の字幕の話。要は、動画の演出上、手前に飛び出す部分が字幕の高ささえ突き抜けてしまい、「2D上は字幕が上に乗っかっているのに、立体視すると文字の部分が引っ込む(めり込む)」という現象が簡単に起こってしまったのでした。前回はうまい解決策が見つからず、最終的には3D版は字幕をはずす、という苦肉の策をとってしまったのですが、・・今回は、実は考えがあります。違和感がない形で、演出面もあきらめない形での解決策を目指してみます。


以上、とりあえず今回考えたテーマ3つです。次回の日記から、たぶん実作業編に入ります。