「ねぇ、マスター。」3D版動画作成日誌 出力と調整、まとめ編

3D版製作日誌の最後に、After Effectsからの立体視映像出力とPremiereへの入力の方法について触れておきたいと思います。

出力時の映像サイズ

これは、平行法と交差法(過去の日誌d:id:OIE:20110601参照)、どちらで作成するかで変わってきます。交差法の場合は、最終的に必要な出力サイズ・比率そのままでレンダリングすればよいのですが、平行法では後の過程で基線長ぶんシフトする、という工程が入るため、シフトするぶんを大きく出力する必要があります。・・つまり、サイズも比率も(横幅のみ影響するため)変化することになります。このあたりが、今回初めて平行法に取り組む上で一番混乱した部分でした・・。


まぁただ、かなり早い段階の計算d:id:OIE:20110603で、シフトする必要がある量は62ピクセルと分かっていたため、これを最終出力サイズの640 x 480 に当てはめれば、必要なレンダリングサイズは702 x 480であることが分かりました。で、その後の変形の可能性やマシン性能なども鑑みて、今回はその3倍の解像度である 2106 x 1440で全カットを出力しています。


下図は左右の映像それぞれについての出力イメージです。上の大きな数字が最終出力サイズの640 x 480 のときのサイズと座標、下の小さな数字が今回の3倍解像度に対応する数値です。グレーがかった領域が、補正後不要になる領域ですね。


Premiere上での平行法の補正

さて、Premiere上で左右の映像をそれぞれ扱う方法ですが、自分はどちらも別々のシーケンスをまず割り当てます。さらに、最終的なサイドバイサイド方式の映像を出力するためのシーケンスを作り、その中でこの左右のシーケンスを変形・並べる・・という入れ子構造にしています。
当然、左右のシーケンスが異なるため、一方のカットの長さやタイミングを変えたりしても、もう一方に自動でそれを反映する・・ということはできません。左右のシーケンスを作り始める前に、まず通常の2D版を完成させ、それを左右のシーケンス用に2回コピーし、手を加えるのは映像の差し替え(2D用から左右用どちらかへの差し替え)のみに抑えます。(というわけで、2D版を先にニコニコ動画で公開し、その後3D版をYouTubeで公開・・というフローになるわけです。)

実際の映像の入れ替えですが、先述のとおり、平行法だと基線長ぶんのシフトが必要になります。このため、まず各カットのアンカーポイントを、有効領域(シフトした後に残る領域)の中心に合わせます。上の図にあるとおり、今回左目用の映像では、指定すべきアンカーポイントは(1146, 720)ですね。ということで、Premiere上のこのカットで、アンカーポイントとしてこの数値を入力します。


これで、左目用の補正が終わりました。ちなみに右目用は、もともと座標が映像の左端に合っており、サイズを適切にあわせれば不要な領域は勝手に画面外に出てしまうので、数値上の補正は必要ありません。


最終出力ですが、現状YouTubeでは、元の映像と同じ比率の映像内に、横幅を半分にそれぞれ圧縮した左右の映像を並べた形式を推奨しています。このあたりは状況や時期によって作るべき形式が変わるかもしれませんが、左右のシーケンスを別々に作成しておけば、それへの新たな対応も容易になると思います。


ということで、今回までの日誌で、「ねぇ、マスター。」3D版への取り組み内容は大体ご紹介できたと思います。個人的には交差法や字幕といった課題にある程度道筋をつけられたと思う一方、奥行き感の効率的な調整フローや2D的映像手法への融合、試験環境の整備など、新しい課題が山ほど見つかったという印象ですね。音楽との同期についても引き続き取り組みたいし。文字通り、3Dはなかなか深遠な世界です。
10日以上に渡り、実際の作業の流れを書いてきましたが、いかがだったでしょうか。まとまりのない文章ですが、もしなにか参考になる点があれば幸いです。