タイムスクープハンター

NHKに「タイムスクープハンター」という番組があります。
ちょっとダサめを狙ったタイトルの時点であやしい香りがしてきますが(笑)、実際のところかなりの色モノ。・・いや、それが言いたいのでなくて、実は「色モノ」という羊の皮をかぶった、野心的な作品なのです。
大まかなくくりで言えば、番組のジャンルは「近代より過去を題材にした教養番組」となるのですが、その切り口が斬新。時間を越えてスクープを求める主人公(要潤)が、過去に起きた出来事を密着ドキュメンタリー風にレポートする、という設定です。なにせ一人でタイムトラベルして潜入するもんだから、映像はハンディカメラのように手振れでガクガク、撮影用の照明もなし。地上デジタルでなお際立つ画質の粗さです(笑)。しかも、扱う出来事は歴史を変えるような一大事件ではなく、どれもその時代に日常的に起きていたようなことばかり。戦場を駆け回れば討ち死にした武士が転がり、顔にすべてモザイクが・・。
なんだこりゃ、て思うでしょ?「こんなの、時代ものを扱う教養番組の『真逆』じゃないか」、と。時代を代表する人物に扮した役者がたが、綿密に設定・構築されたセットの中で名シーンを再現する・・そんな一般常識と逆だ、と。
でも、それこそが狙いなんです。多分。機会があれば、ぜひ実際に番組を見てみてください。「ドキュメンタリー」というスタイルでしか切り出せない「生々しさ」が、そこにあります。光を当てられてこなかったような、時代の日常風景を、粗い映像という経路を通して見る・・そのとき確かに、身体感覚として、自分の目・体がその場にいるような、異常なほどの「リアリティ」を体験してしまうのです。

ドキュメンタリー的表現方法を報道番組以外に持ち込んだ、という意味では、「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」に近いのかも。こちらの「タイムスクープハンター」は、映画と比較してしまえばカタルシスやサスペンスの要素はさすがに薄くなります。が、その時代の背景や登場人物たちの仕事・生活といった、歴史の授業では扱わないけどとても興味深い情報をきっちりと盛り込んでおり、「教養番組」としての完成度は、従来の形式の番組に全く引けをとりません。
生々しさを伝えるリアルタイムの会話の代償として、多少やり取りの流れが滞るシーンも見られましたが、そのうちにバランスの良い表現の仕方にたどり着けると信じています。それよりも、新規の・・それも野心的な番組制作にあたり、これほどまでに説得力・満足感のある作品を作り上げた方々に、本当にありがとうと伝えたいです。

この番組、本当に今日で最終回なんですか?なんかタイムスクープハンターがエラいトラブルに巻き込まれて終了してしまいましたが(笑)。「終わって残念だ」とは言いません。「次回にも期待しています」!!。
【5月28日追記】早速タイムスクープハンター、新しい動きがあるようです!5月28日日記(d:id:OIE:20090528)後半参照。