「ねぇ、マスター。」3D版動画作成日誌 E01編

さて、今回はE01に入ってきました。歌詞で言うと「ふみにじられた言葉」から「いま」まで、見上げるミクのイラストが印象的なカットです。

3Dで同じシーンを「作り直す」

3D的な複雑さは、それほどではありません。というより、2D版では、ほとんど2Dとしてのレイヤーを操作することで作成していたカットです。ただ、そこが問題。


恐らく、2D版を下敷きにした3D版を作成するような状況で、もっとも面倒な(そしてクリエイティブな)悩みは、作成したい立体映像をどのような形で再構成・実現するかということです。現在までに作成したA01, B01, C01, C02は、2D版作成時にすでに3Dの演出を考えられていたため、基本的には左右のカメラを設置し、細かいところを調整するだけでした。
しかしこのE01は、2Dとしての演出は固まっていたものの、これをどう3D化するかは作成時まで決定していませんでした。実際に作業に入るまでの流れや、それまでに考えたアイディアを利用することにしたわけです。


E01は、そのなかでも2つのパートに分かれます。前半は街並みと人ごみが交差し、それにミクが囲まれているカット。後半は、ミクの背景で泡が舞っているカットですね。まず前半について、街並みと人ごみのレイヤーを深さ的に離して配置してみましたが、どうも紙芝居のような雰囲気になってしまいボツ。最終的には、この2レイヤーはかなり距離を近くし、ミクも画面少し奥、2レイヤーからあまり離れない場所に配置しました。これは、まず歌詞として、街並みと群集に「囲まれているような」近い距離感を再現したかったこと、さらに、A01のとき(d:id:OIE:20110605)に触れたとおり、音楽として音域を狭くしたこの箇所で、3Dとしても同期を取るためです。
D01では、この中でもどんどん音を重くし、音域も高いところから低い音まで広げていきました。ここからコントラストをつけるかたちで、E01に入ると一気にシンプルに、また中音域に絞るかたちにしており、この高さ情報を3Dにも持ち込んだことになります。(もちろん、E01に入ってすぐに、ベースをショッキングな形で「がーん!」と出てくるわけですが、ここでは映像は同期して、暗転した上で深い場所にもうひとつミクの映像を配置しています。)


ところで、3D化するときに出てくる問題のひとつは、対象物の相対的な大きさの変化です。配置する深さを変えたりすれば、当然映像上の大きさも変わって見えてきます。このときは、基本的にその対象物のサイズ(スケール)を変更すればOK。2D版のときのレイヤーを残しておき、3D版のレイヤーを表示したり非表示したりをペカペカ繰り返しながら、画面上のサイズを少しずつあわせていきます。ほんとはエクスプレッションとかで、どの位置においても画面上の大きさが変わらないように自動化してあげれば楽かもしれませんが、そのエクスプレッションを作るほうが面倒か・・。

特殊効果を与えた3D画像ペアの取り扱い

E01後半は、前半とは少し悩みが異なります。D01でも登場した泡のカットを加工してこの箇所で利用しているわけですが、たとえ元の泡のカットが3Dでしっかり作成できていたとしても、左右の映像を2D的に過激に加工してしまうと、加工後の画像で立体視がうまくいかないおそれ(悪くすれば、目に過大に負荷をかける可能性)がありました。また、画像を大きく加工していない箇所でも、泡のカットが多重で表示されるところでは、3D的にも混ざり合っててんやわんやになる予感がありました。
ということで、今回の解法は、3Dとして扱うレイヤーは1つに絞り、その他のレイヤーは左右で同じ映像を使い、基本的には平面として重ねることにしました。これであれば、3Dとしても大きく破綻せず、もとの味もある程度活かす事ができます。あまり3Dとしてのスカスカ感も目立たずに済んだかな・・と思いますが、どうなんだろう・・。ここらへん、3Dの映像をディゾルブなりで2つ以上重ねたときにどうするべきかは、個人レベルではなくまだまだ大きな課題となりそうです。なにかしらの表現に収斂するとは思うんですけどね。


ということで、次回はD01。今回も出てきた、泡のカットになります。(実際の作業としては、D01で仮のカットをつくり、これをE01で試験的に利用しながら先にE01の骨格を組み立てました。)