「ねぇ、マスター。」3D版動画作成日誌 C02編

昨日はC01までを見てきましたが、今回はC02の立体化です。え?D01とE01はどうしたかって?実は立体化としての難易度がこの両者は高く、いくつも大きな課題が見えているため、先にC02を進めたかったのです。

レイヤー多!

C02、つまり最後のサビである「ねぇマスター」からエンディングまでですが、静止したミクを画面に配置している点は、A01からC01までと変わりません。しかし、AE的、立体視的にはかなり多くのパーツが含まれています。


まず、もっとも大きく目立つのは、後半で登場するパーティクル(光の粒)ですね。AEでは、個々の粒子を細かく面倒を見ない代わりに、重力や発生量といったパラメータでたくさんの物体をアニメーションさせるエフェクトがいくつか用意されています。ただ、複数あるとはいえ、それらの大部分は2D上でアニメーションを描くものであり、今回の立体視で描きたかった「ミクの周りを粒子が飛ぶ」様子を再現することが出来ません。まぁ、このようなレイヤーを何枚も、深さを変えて並べてあげれば、擬似的に空間全体に粒子が飛ぶように見せることは可能なのですが、今回は後述のとおり、もっといい方法があります。

CC PARTICLE WORLDとちょっとしたコツ

例外的に3Dとしてパーティクルを扱うことができるエフェクトが、エフェクト->Simulation->CC PARTICLE WORLD です。これは3D空間の中にあるパーティクルとして各種演算・レンダリングが可能であり、またAEのカメラと連動しているため、カメラを動かしてもほかの通常のパーツと無理なく合わせやすい、という特徴があります。ただし、先に問題点を指摘しておくと、パーティクルの演算や扱いは3D空間に広がっているとは言っても、出力の形態はあくまで2Dのレイヤー。つまりコンポジションのような位置づけなので、例えば3D的にはある対象物がパーティクルよりカメラの手前にあっても、AE上のレイヤーの並びとして対象物が下にあれば、その対象物はパーティクルに遮蔽されてしまいます。このように、CC PARTICLE WORLDが作り出すパーティクルとカメラの間に別の対象物が割り込む場合には、特別の対応が必要となります。


実はこの問題、C02の後半で顕在化しました。当初は、前述の「ミクの周りを粒子が飛ぶ」様子を再現するため、このCC PARTICLE WORLDで作成した粒子が、ミクの頭上から(正確には、仮想の球状の「Sphere」から)振ってくるように配置しました。ところが、このまま3D化してしまうと、ミクで遮蔽されるはずの粒子までミクの「上」に描画されてしまい、この結果、ミクよりも「深い」粒子が、そこだけへこんだ様に立体視に現れてしまうことになります。2Dのままであればあまり違和感がなくても(もともと手前にある粒子はそのままミクの上に描画されているわけだから、その中に紛れやすい)、立体視した途端に問題が顕在化してしまうわけですね。
では、これをどう解決するか。今回考えた回答は、ミクより手前のパーティクルと、後方のパーティクルを別々に演算する、という方法です。まず、今までミクを取り囲むように発生させていたパーティクルを分割するように、それぞれ別々のレイヤーでCC PARTICLE WORLD を適用して、お互いの領域にかぶらないように粒子を発生させます。そして、ミクより後方のパーティクルレイヤーに対してのみ、ミクをマスクレイヤーとして適用します。これで、ミクより後ろの粒子がミクで遮蔽された状態を作り出すわけですね。これで、前方のパーティクルと一緒にレンダリングしてあげれば、あたかもミクの周りを(シンプルに)粒子が降ってきている様子を描くことが出来ました。

スポットライトという物体はないけれど

さて、C02に存在するのはミクとパーティクルのレイヤーだけではありません。このほかにも、前半で空から降ってくる光線と、中盤から登場するスポットライトのような光線がそれです。両者が共通しているのは、本来は空間に漂う塵や水分に光が当たって、厚みをもって光りだす様子を、単純なレイヤーを数枚並べることで代用している点です。前者のような様子をまじめに計算するレンダリングを「ボリュームレンダリング」といったりしますが、本格的な3Dソフトならともかく、AE上ではこれを扱う機能はありません。このため、光の筋を表すレイヤーを並べることで代用するわけです。前半の空からの光線は、合計3枚の大きなレイヤーを配置し、不透明度でアニメーションをさせました。スポットライト部分については、ある程度カメラが動いても違和感がないように、奥行きを持たせて3枚縦に並べています。


ということで、いくつかトリックめいた対処法を行っていますが、基本的にはC02はA01からC01の延長線上であり、3D化にあたっても、それほど筋の悪い問題にぶつかることはありませんでした。実はあとひとつ、新しい試みを組み込む予定なのですが、出来上がりを確認しつつ、採用するかどうか決めていきたいと思います。(採用した場合は、後日の日記で改めてご紹介します。)
それよりも、真に3D化で問題を起こしそうなのは、残ったD01とE01です。さてさて、どうなりますことやら・・。