「ねぇ、マスター。」3D版動画作成日誌 字幕編

前回までにD01を除くすべての箇所を作成した(もちろんあとで修正を加えること前提)わけですが、D01とその他の箇所では決定的に異なるポイントがあります。それが、今回取り上げる字幕。

異世界の住人、「字幕」

雰囲気や世界を主に伝える映像とは別に、文字情報を画面上に表示させるのが字幕です。洋画など様々な映像で見慣れているので違和感はありませんが、実際のところ、もともとある映像の上に有無を言わさず文字が乗っかってくるわけなので、乱暴といえば乱暴な仕組み。そしてこの乱暴さが、3D化にあたり問題を表面化させるのです。


もともと高さといった概念を持たずに映像に上乗せしているものなので、3D化ではどの深さに配置するかを検討する必要があります。というのも、高さを適当に考えて配置すると、映像のなかの対象物が立体視として「手前」にあるのに、「うしろ」にあるはずの字幕がその上に乗っかってしまい、対象物に字幕がめり込むような立体映像になりかねないからです。
では、それを防ぐにはどうするか。当然、映像に干渉しないよう、一番手前に来る位置に配置するしかありません。しかし人間の目には、適切に立体視を行える範囲というものがあり、映像内で一番高いピークにあわせて字幕を高く配置すると、表示時は常に目に負荷を与えることになり好ましくありません。逆に、負荷を与えないようなそこそこの高さに字幕をおくことを考えれば、映像はそれに合わせて飛び出す量を抑える必要があります。


前回作成した3D版「無限トランスファア」では、この字幕の件を考慮せずデプススクリプト(映像内の高さの遷移計画)を作成したため、いざ字幕を載せる際に困ってしまい、結局載せないことにしたという経緯がありました。問題は、字幕を考えた瞬間から、文字通り表現の「幅」が制限されてしまう点ですね。

舞台の棲み分け

で、今回ですが。以前(d:id:OIE:20110601)書いたとおり、当初からの目標として、字幕は確実に入れるつもりでした。その上で、立体視としての表現も追求したい。そこで、少し考え方を変えることにしました。
字幕を入れる際は、目に負荷を与えない程度の高さに抑える。これを守るため、映像のほうも高さはそれを越えない範囲に抑える。そして、字幕が入らない箇所は、対照的にこれらの制限を撤廃して、自由に高さを活かした立体視の映像を実現する・・と。つまり、字幕が入る箇所と入らない箇所で、もともとの設計から考え直しましょう、ということですね。


ということで、今回は実は、このD02が字幕が入らない箇所であり、それ以外は字幕が入る箇所です。そこで、D02以外は、主役であるミクを字幕よりちょい奥にあたる高さに配置し、それ以外はもっと奥に。これを前提として高さの設計を行いました。そしてD02では、これらを気にせず、泡などが手前に出てくるような映像にしたわけですね。


今回はこのような方法でいきましたが、作品によってはあえて字幕を入れない、映像上の干渉しない位置に適宜字幕を配置するなど、対処法はいくつかあると思います。が、立体視特有の問題なので、最初にどうしたいかは検討したほうがよさそうですね。