セカイカメラで思った、イベントへの影響とか

1.はじめに

9月24日にリリースされたセカイカメラ。「空間にタグを貼れる」という概念がイマイチ理解できずじまいだったのですが、公式ページで紹介されている動画ファイルを見て、ようやくその意味を理解することができました。・・と同時に、今回のタイトルにあるような、「同人イベント(パロディ・オリジナル、メディア問わず)に影響は起こりうるか、またその内容は?」という点がズビズバ!と頭に浮かんできたので(笑)、ここにまとめてみたいと思います。
概観としては、同人系イベントに関係するメンバーを以下の3つのグループに分けて(コミックマーケットにおける区別の概念を基にしています)、それぞれに起こる影響等を個別に、また複合的に考えていきます。
・一般参加者
開催日に会場で、サークル参加者が販売する頒布物を購入するために来場するメンバー。
・サークル参加者
開催日に一般参加者に対して頒布物を販売するメンバー。
・スタッフ参加者
イベントの運営を行うメンバー。ここでは広義に、主催者・運営団体等も含めてスタッフ参加者と呼ぶことにします。

なお、(このブログの他の記事もそうですが)乱文雑文、また将来的に追記・修正を適宜行う場合があることをご了承下さい。


2.想定される利用シーン

恐らく数日レベルで現実に起こる話です。場所に対して貼られるのがタグなので、もっとも考えやすい貼り付け対象は、イベントに参加しているサークルのスペースです。

2.1 サークル参加者による販促物の紹介

まず、サークル参加者が自発的に、自身の販促物のイメージと売り文句等を書き込むことが考えられますが、これは注意が必要です。セカイカメラサービス利用規約内、3.5(d)『商業用の広告、宣伝を目的としたコンテンツ、スパムメッセージ、チェーンレター、無限連鎖講、その他勧誘を目的とするコンテンツを掲載、開示、提供または送付する行為(ただし頓智ドットが別途許可した場合を除く)』に抵触する可能性があります(『商業用の・・』のくだり等の解釈は要検討)。逆に、この利用方法が公に認められるようになれば、下の落書きのような光景が見られるようになるはずです。つまり、各サークルが自作の販促物を紹介するエアタグが、会場内、通路(島)にそって無数に並ぶ光景・・。想像するだけで、ちょっとワクワクしませんか(笑)?

2.2 販売状況の情報の共有

特に販売規模が大きなサークルでは、購入を希望する一般参加者の長い列が形成される場合があります。このとき、列に並ぶ、もしくは並ぼうとする一般参加者に対して、2.1とは異なる視点の、有用と考えられる情報を配信できるかもしれません(ex.「新刊1000円・5限」「1時間待ち」「残り100部」)。従来、グループ単位で行動していた一般参加者がそのグループ内でのみ共有していた情報が、エアタグを介して他の参加者にも伝わった場合、そこに何が起こるのか・・。相当に未知数の部分ですが、ひとつ言えることは、情報の共有化が進めば、「人の流れが変わりうる」ということです。混雑する箇所、列の長さ、販売数・・影響の度合いは違えど、その範囲は計り知れません。一般参加者・サークル参加者だけでなく、スタッフ参加者についても、列の整備や誘導等に影響があるかもしれません。

2.3 場所情報の共有

イベントの会場内外のスポットについて、その場所の情報を提供する利用法が考えられます。あらかじめ設定される情報としては例えば、救護センター、問い合わせ窓口、トイレなど、公共性の高い場所が挙げられるでしょう。これは、主に一般参加者・スタッフ参加者によるタグ付けが考えられます。また、混雑等で通行が難しくなった箇所や一方通行が実施された箇所など、突発的に発生した場所情報が共有される・・というシーンも見られるかもしれません。


ところで、セカイカメラでは、一定範囲内にあるエアタグのみを表示できますが、この範囲を50メートルから300メートルまでの間で設定できます。これを、代表的なイベント会場である東京ビッグサイトにあてはめると、少し面白いことが分かりました。
Google Map の空撮写真を基にした概算ですが(笑)、東ホールの中の各セクション(東1/2/3, 4/5/6)の幅は100メートル弱。デフォルトの設定範囲である150メートルだと、隣のセクションにあるエアタグまで表示されることになります。また、東1から3までのセクションをぶち抜きで使用する場合(例えばコミックマーケット)を想定すると、このホール全体の対角線の長さはちょうど300メートルくらい。つまり、設定範囲を最長の300メートルにすると、ホールの端っこから向こうの端っこまでのエアタグをすべて見渡せる計算です。コンコースに近い側の端っこに立てば、片方のホール(ex. 東1-3に対して、東4-6)にあるエアタグも大部分見渡せるでしょう。


3.想定される課題点

2.で俯瞰したとおり、セカイカメラの導入・普及により、イベントの参加者すべてに新しい環境をもたらす可能性があります。この章では、発生しうる影響の中でもあえてネガティブな部分に焦点を当て、対応策を探ってみます。

3.1 販促物紹介によるサービス利用規約への抵触

2.1で紹介した、サークル参加者による販促物の紹介タグの掲載については、10月から続々と開催される各イベントにおいてすぐに現実的に起こりうる光景です。ルールとして明確化するか、早急な判断は保留とするか、どちらにしろサークル参加者・スタッフ参加者はともに、本件について検討を始める価値があると思います。
(ここでは敢えて、想定される道筋等は書きません。参加者・関係者の総意と時勢によって対応が決まるべき問題だと考えています。・・が、個人的な意見としては、将来の多様な表現の芽を摘むことは、どの人にとっても不幸なことではないでしょうか。単純な実現の是非だけでなく、「シャウト禁止」「退場前の自主的なタグの削除」といった一定のルールを守った上での実現など、多角的な検討が望まれます。)

3.2 利用者による通行の妨げ・他の参加者との接触など

セカイカメラは、ディスプレイ上にエアタグをオーバーレイするというその仕組み上、利用者は当然そのディスプレイを注視します。カメラで写す光景も表示されるので、一応ディスプレイの向こうの光景も見えますが、焦点距離が違ったりと、通常の視界より見えにくくなっていると考えるべきです。実際の会場では、立ち止まって操作する人と、歩きながら操作する人の両方が見られると思います。しかし前者は、通行人の妨げや、立ち止まり禁止区域での立ち止まり、後者は前方不注意による衝突などが懸念されます。
具体的な利用シーンを考えてみましょう。各種乱立するタグをたっぷりながめてみたい!という希望は多そうですが、当然会場のど真ん中で360度見渡そうとすると、他参加者の通行の妨げになります。(ディスプレイ上の東西南北のナビゲーションを使って、クルクル眺める人とか出てきそうですが・・。)となると、自然と会場のスミや壁際で立ち止まって操作する人が多くなりそうです。また、特に壁際に配置されることの多い、頒布規模の大きいサークルについて情報を得ようとする参加者も、壁際や出入り口に集まるかもしれません。すると、各会場に設置された立ち止まり禁止区域(防火シャッター前など)以外の壁際は、現在よりも人の流れが滞留しだす可能性がでてきますし、参加者同士、特に利用者の不注意による衝突も起こりうると思います。
これらの問題が顕在化した場合の対策として、現状考えられるのは、特に立ち止まる利用者については「一度会場外に出ること」といったルールを定めることかもしれません。もっともこれは、セカイカメラ利用者に限定される話ではなく、会場の真ん中で立ち止まること自体について改めてルール化しているにすぎませんが・・。一方、立ち止まらずに利用しながら会場を移動することについては、その危険性と付随するマナーについて利用者が自覚的である必要はあると思いますが、今後の発展を促すという意味でも、ある程度は認められてもいいのかな、と個人的には思います。もちろん、歩行中に回りに気を配るのは必須条件ですし、タグの入力といった操作も行うべきではないでしょう。

3.3 貼り付けられたエアタグの信頼性と認識

誰もが簡単に貼り付けることができるエアタグ1つ1つに、正確性・有用性の保障はありません。内容の真偽だけでなく、時間の経過によって陳腐化するものもあるでしょう。しかし、イベント会場内では、すべてのタグが横並びに表示されるため、なおそのことについて意識的である必要があると思います。
ここで、2.3のように、スタッフ参加者が明確に「正しい」とする情報を配信したい場合、他の利用者からはそれが「正しい」ものかどうか(スタッフ参加者が本当に貼り付けたものか)を確証する方法は現状ない(?)点にも注意が必要です。セカイカメラの法人サービスの利用により、明確に異なる様式での伝達が可能かもしれませんが、サービス内容やそれを享受できる利用者の範囲など、サービス利用に際して検討すべき内容は多いことでしょう。


4. 現在からとるべき対応

3.では課題点に対する解決策、という形でまとめましたが、ここではもう少し包括的に、サービス全体が一般化しだしたときに備える対応全般を考えてみたいと思います。
まず、もっとも利用者が多くなると考えられる一般参加者については、タギングの実際の利用、新しい活用方法の発見が相互に影響しながら進んでいくでしょう。このとき、3.2 で見たような新しい慣習・ルールが生まれた場合は、うまくこれに馴染むように対応する必要があります。
サークル参加者は、自身のサークルの情報を公開できるかもしれませんが、3.1 の課題についてあらかじめ検討するのがよいと思われます。また、一般参加者が残していくエアタグを参照することでも、会場内や今後の対応に参考となるものがあるかもしれません。
スタッフ参加者は、適当と思われるリソース内で、窓口や公共的な施設のタグなどの付加情報を提供する、というサービスが考えられます。ただし、サービス利用者が十分に多くなるまでは、サービス前提の運営ではなく、あくまで「付加情報の提供」程度に留めるのが合理的と思います。


5.最後に

セカイカメラは、これまでに見てきたとおり、普及度合いによっては参加者すべてに変化を与える可能性があり、潜在的な影響力は計り知れません。イベントでの利用体験の向上とセカイカメラの利用拡大、両者が良い状態で実現できるよう、動向を注視する必要があるでしょう。そして、今まさに参加可能で、参加の意志がある方は、この変化の一端にぜひ関わってみてください。それは、例えルールをまとめたりタギングをしたりなくとも、ディスプレイを通じてイベントを眺めるだけでかまいません。まさに起きる変化に関われる、リアルタイムのワクワク感が、きっとそこにあります。



・・えらい長文になってしまった・・。たぶんこの日記自体も、数年、いや数ヶ月であっという間に陳腐化しちゃうとは思うんですけどね。でも、セカイカメラが実際に世に現れて、その実態を知ったときの衝撃と思ったことを残しておきたいと思い、一般参加・サークル参加の経験をもとにこのような形でまとめておきました。